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歯周内科

歯周内科治療とは

歯周内科治療は、薬で歯周病の原因菌を内科的に改善する、身体にやさしい治療法です。位相差顕微鏡でお口の中の細菌やカビ、原虫などを確認し、それぞれに合った薬を選んで短期間で口腔内の環境を整えます。治療前後の状態は動画で確認できるため、目で見て改善が分かる安心感もあります。
歯周内科治療は、主に中等度〜重度の歯周病に効果を発揮します。
従来の歯磨きや外科処置では、口内環境を整えるのに1〜2年かかることもありましたが、歯周内科治療では薬で原因菌を抑えるだけで短期間に改善が可能です。微生物の状態が整ったあとに歯石を取るので、冷たいものがしみる不快感も少なく、治療の負担を最小限にできます。
歯周病はお口の中の感染症で、放置すると歯を支える骨や組織が壊れ、最終的には歯を失うこともあります。また、心臓や妊娠、糖尿病など全身の健康にも影響します。短期間で改善でき、体への負担も少ない薬による歯周内科治療は、安心して受けられる治療法です。

お口の中の菌を“見える化”「位相差顕微鏡」

位相差顕微鏡(いそうさけんびきょう)とは?

位相差顕微鏡(いそうさけんびきょう)とは、「位相差観察」を行うための顕微鏡です。位相差観察とは、波長などの違い(光線の位相差)をコントラストに変換して細菌や細胞などを観察することです。通常の顕微鏡では、染色の際に細胞が死んでしまうため、細胞を生きたまま観察することができません(細胞は染色しないと見えないため)。 しかし、位相差観察なら光の干渉や回折を利用して、細胞を染色することなく観察することが可能です。これにより、「生きたままの細菌」をそのまま観察できます。

位相差顕微鏡検査

当院では、患者さまのお口の中に付着した歯垢(プラーク)を少しだけ採取し、それを位相差顕微鏡で観察する検査を行っています。生きた状態の細菌を観察することができるため、現在のお口の中の状態や、歯周病のなりやすさなどが分かり、今後の経過の予測が可能です。 また、位相差顕微鏡で観察した動画は、ご本人にも確認していただけます。お口の中の現在の状態を把握していただくことが、より分かりやすい説明と正しく理解をしていただくことに繋がります。

位相差顕微鏡検査について

位相差顕微鏡の動画

歯周病原菌の特性

歯周病原菌は、ブラッシングだけでは除去できません

歯周病原菌は、歯周ポケットの奥深くに潜んでいます。しかし、歯ブラシの毛先が届くのは約3㎜までです。そのため奥深くの細菌が棲み着いている場所までは清掃が行き届きません。ですが、この歯周ポケットの奥深くに存在している細菌をしっかりと取り除かないと歯周病が再発する原因となってしまいます。

むし歯・歯周病原菌は唾液で感染

むし歯・歯周病原菌は唾液を通じて相手に感染させる性質もあるため、ご家族がいる方や小さなお子さまがいる方は、むし歯・歯周病原菌をうつさない為の予防をすることが大切です。

歯周内科治療が効果的なケース

歯周内科治療が必要となるのは、通常の歯周基本治療だけでは改善が難しい場合や、繰り返し歯周病を発症してしまうケースです。

歯周病の初期症状がある

歯茎の腫れ・出血・口臭などの症状がある場合は、早期に原因菌を特定して治療を始めることが大切です。歯周内科治療により、菌の活動を抑え、進行を防ぐことができます。

 歯がぐらついてきた

歯が動くようになった場合、すでに歯周病が進行している可能性があります。放置すると歯を支える骨が溶け、最悪の場合は歯を失うことも。原因菌への内科的アプローチで、進行を食い止めることができます。

歯周病がなかなか治らない

ブラッシングやスケーリングなどの基本的な治療を続けても改善しない場合、原因菌が深い歯周ポケット内に潜んでいることがあります。抗菌薬を用いた歯周内科治療が有効です。

歯周病を何度も繰り返す

治療をしても再発を繰り返す場合、菌が完全に除去できていない可能性があります。歯周内科治療では、残存している細菌にも働きかけ、再発リスクを大幅に減らすことができます。

口臭が強く気になる

歯周病菌が発するガスによって、強い口臭が生じることがあります。薬剤によって原因菌を抑制することで、口臭の改善も期待できます。

当院の歯周内科治療

投薬による歯周病除菌

薬で歯周病を治す、新しい歯周病治療です。 従来の歯磨きと定期的予防処置で治癒するのを待つだけの治療ではなく、歯周病の原因となっているものから根本的に治す画期的な治療方法です。 お口の中には500種類以上の細菌が存在しているといわれていますが、最近の研究ではその内の4~5種類の細菌が歯周病の原因菌であることが分かってきています。代表的な細菌が以下のものです。

    • ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)
    • トレポネーマ・デンティコラ(td菌)
    • タネレラ・フォーサイシア(tf菌)

お口の中にたくさんの歯周病原菌がいる方は歯周病が進行しやすく、逆に歯周病原菌が少ない方は歯周病にかかりにくいのです。歯周病原菌による感染症として捉える考え方です。これで、しっかり歯磨きをしているのに歯周病にかかってしまうのは何故かということがお分かりいただけると思います。 それなら、お口の中に存在する歯周病原菌の割合を検査し、歯周病原菌をなくせば良いのではないか。最近の細菌検査と抗生物質の向上により、それが可能になってきました。
歯周病原菌は生まれつき持っている菌ではなく、ご家族間などで特にうつりやすい病気ですので、除菌治療を行う際には、同居されているご家族の方も一緒に歯周病細菌検査を受けるようにしましょう。

FMD(フルマウスディスインフェクション)

新しい歯周病治療法として、投薬による歯周病治療を取り入れました。
この治療方法は、24時間以内に歯周病の原因菌となる全口腔内の感染物排除を行う方法です。
SRPのように顎の1/4ずつ行う方法では、初期治療が終了する前に再感染するリスクがあるため、これを予防するためにQuirynenによって提唱されました。
マウスリンスによって歯周ポケット内の洗浄を行う方法に加えて、現在では内服抗菌薬を用いた術後の細菌感染リスクをコントロールした上で行う方法が考案されています。 細菌検査に基づいた抗菌療法とその後のFMDの導入により、重度の歯周病の方に対して、初期治療の早期化、歯周病治療の達成、歯周病原菌のご家族間での感染防止などのメリットがあります。

歯周病除菌治療の手順

1歯周病原菌のチェック

まず初めに、位相差顕微鏡で歯垢の中に含まれている細菌を確認します。これにより、歯周病原菌の有無を検査します。お口の中に付着した汚れを少し取り、その中に含まれる歯周病原菌の割合を検査します。5分ほどでできる、痛みもない簡単な検査です。 位相差顕微鏡では、実際にお口の中の細菌がどのように動いているかをパソコン上で確認していただけます。多くの患者様のお口の中の細菌を観察していると、人によって細菌の種類や動きが大きく違っていることが分かります。このように、位相差顕微鏡でしっかりと観察を行うことで、お口の中の細菌の種類や数が分かります。歯周病になっている場合は細菌の動きが激しく、パソコンで確認していただくとより分かりやすいです。 お口の中には常在菌や善玉菌も存在しているため、細菌がいること自体は悪いことではありません。そこで、お口の中に存在する細菌が悪いものかを調べるために、唾液検査を行います。

2除菌処置

検査で歯周病原菌が多く確認された場合は、専用の薬剤や洗浄液を用いた除菌処置を行います。
歯石やプラークを丁寧に取り除き、細菌が再び増殖しにくい環境へ整えていきます。
除菌と同時に、毎日のブラッシング指導も行い、細菌が付きにくいお口を目指します。

3再検査・効果の確認

除菌処置の後、再度位相差顕微鏡で細菌の状態をチェックします。
細菌の数や動きが落ち着いていれば、治療が順調に進んでいるサインです。
このように、「見て」「除菌し」「確認する」という3段階の流れで、
歯周病を根本から改善へ導きます。

歯周病を再発させないために

3か月に1回の定期メインテナンスを習慣に

歯周病は、一度治療を終えても油断すると再び進行してしまう“慢性的な病気”です。
再発を防ぐためには、治療後のケアをいかに丁寧に続けられるかが大きな鍵となります。

日々のブラッシングはもちろん重要ですが、家庭でのケアだけでは歯と歯の間や歯ぐきの奥に潜む細菌を完全に取り除くことはできません。
そこで大切なのが、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアです。

歯石やバイオフィルムを専門の器具でしっかり除去する「メインテナンス」により、歯周病菌の再増殖を防ぎ、健康な歯ぐきを維持することができます。
また、唾液検査や位相差顕微鏡による細菌の状態確認を行うことで、再発のリスクを“見える化”し、早期対策が可能になります。

治療を終えた後こそが、本当のスタートです。
3か月に1回の定期メインテナンスを習慣にし、再発しにくいお口の環境を一緒につくっていきましょう。

予防処置